Books 《 渡部の本 》

AI に負けない「教育」

渡部信一著  大修館書店 1,800円(+税) 2018

本表紙 アマゾンで購入する

 最近、「人工知能」という言葉を耳にすることが増えた。「AI Artificial Intelligence」という英語の名称を聞くことも多い。マスコミ報道によれば、「人工知能はまもなく人間の知能に追いつき、その後は人間の知能を遙かに超えた人工知能が出現する」という。このような報道を耳にすると、私には次のような疑問がわき上がってくる。

人間の知的作業はすべて「人工知能」に取って代わられてしまうのではないか?
そうなったら学校では、どのような「教育」をすればよいのだろう?
学校では、何を教えればよいのだろう?

実際に歴史を振り返ってみても、新しいテクノロジーが人間から仕事を奪い取ったという例は珍しくない。18世紀後半から始まる産業革命では綿工業の機械化が進み、手工業者の多くが失業した。そして、1960年代には工場のオートメーション化が普及し、工場労働者の数が一気に減少した。これと全く同じように、今後「人工知能」やロボットの台頭により大量の失業者が生まれると予想されている。 そのような時代の大きな流れに影響されてのことだろうか。近年、教育現場でも単に表面的な「学力」だけではなく、人間の「知」や「能力」のより深いところに着目しようという気運が高まっている。例えば、「生きる力」「人間力」「社会人基礎力」「学士力」、そしてそれらを総称した〈新しい能力〉が話題になっている。さらに海外においても、「ジェネリックスキル generic skills」や「キー・コンピテンシー key competencies」などと表現される能力が着目されている。そして、これらの〈新しい能力〉を育成するためには学習者の「主体的な学び」が大切であるとされ、「アクティブラーニング」など授業に関する様々な工夫が提案されている。 このような「人工知能」の発展や教育現場の動向を目の当たりにして、私には次のようなさらなる疑問がわき上がる。

これからの時代、「人工知能に負けない能力」とはどのような能力なのか?
そして、そのような能力を身につけるための「教育」とは?

本書では、このようなシンクロする教育現場と「人工知能」の研究開発に着目することにより、これからの「教育」について考えてゆきたい。
(「はじめに」より)

TOP PAGE