渡部信一編著 大修館書店 1,400円(+税) 2007
アマゾンで購入する神楽の舞をモーションキャプチャによりデジタル化
デジタル技術はどこまで「わざ」の本質にせまれるのか
今、日本の「わざ」は危機的状況にある。日本舞踊や邦楽など伝統芸能の「わざ」、地域に伝わる民族芸能の「わざ」、そして宮大工や旋盤工など職人の「わざ」などなど・・・・。名人と呼ばれる師匠の多くは現在、かなりの高齢になっている。しかし、社会の変化や少子化の影響で、それらの「わざ」を継承しようとしている若者の数は決して多くない。このままでは、その「わざ」自体が消滅してしまう可能性すらある。
一方、テクノロジーの発展にともないコンピュータの性能が飛躍的に上がってきた。コンピュータは、1940年代に誕生してから進化し続け、現在では文章や写真だけでなく動画や3次元のコンピュータグラフィックスも手軽に扱えるようになっている。
最先端のテクノロジーを活用すれば、日本の「わざ」を後世に残すことができるのではないか?
日本の「わざ」をデジタルで伝えようというプロジェクトは、このような「思いつき」から始まった。本書では、私たちがこれまで行ってきたプロジェクトを紹介するとともに、日本の「わざ」をデジタルで伝えることの意義や限界について検討してゆく。
これまでは、気の遠くなるような長い時間を師匠とともに過ごし、その「わざ」を盗むことによって伝承されてきた日本の「わざ」。このような「わざ」というとてもアナログな世界を、私たちは今コンピュータというデジタルの道具を使って表現し伝えようとしている。しかしその時、いくつかの疑問がわいてくる。
日本の「わざ」は、本当にデジタルで表現し伝えることができるのだろうか?
デジタル化することで、何か本質的なものが抜け落ちてしまうのではないか?
「わざ」の何がデジタル化可能で、何が不可能なのか?
もし、デジタル化が可能だとしたならば、そのときのポイントは何か?
本書では、このような疑問に対し、3つの対談を行いながら検討してゆく。